在留資格「企業内転勤」の審査が厳格化——2026年4月から勤務実態の証明が必須に

2026年4月より、在留資格「企業内転勤」の審査が厳格化されました。出入国在留管理庁は、これまでよりも詳細な資料の提出を求める運用を開始しています。具体的には、申請者である外国人が来日前に勤務していた海外の事業所や、本人の勤務実態に関する証明資料が新たに必要となります。

この変更は、海外拠点から日本へ従業員を転勤させる企業にとって、今後の申請手続きに大きな影響を与えます。準備すべき書類が増え、審査の視点も変わるため、制度の正確な理解と適切な対応が不可欠です。本記事では、行政書士・外国人雇用労務士の視点から、今回の審査厳格化のポイントや企業の皆様が準備すべきことについて詳しく解説します。

目次

「企業内転勤」の審査が厳格化——何が変わったのか

2026年4月、出入国在留管理庁は在留資格「企業内転勤」に関する運用方針を見直しました。日本経済新聞(2026年4月7日付)でも報じられたこの変更は、外国人材の受け入れを行う企業にとって非常に重要です。

主な変更点は、審査が「形式的な確認」から「実態ベースの確認」へと大きく転換したことです。

【これまでの審査】 – パスポートや海外の事業所が発行した在職証明書など、形式的な書類の確認が中心でした。 – 提出された書類に不備がなければ、比較的スムーズに許可が下りるケースも少なくありませんでした。

【2026年4月からの審査】来日前に勤務していた海外事業所に関する資料の提出が新たに求められます。 – 例:事業内容がわかるパンフレット、登記事項証明書など – 本人の勤務実態を証明する客観的な資料の提出が必須となりました。 – 例:雇用契約書、給与明細、勤怠記録など

この変更により、申請者が本当にその海外企業で、在留資格の要件を満たす期間(原則1年以上)継続して勤務していたのか、その実態が厳格に審査されることになります。単に在職証明書を提出するだけでは不十分となり、企業側はより客観的で詳細な証明資料を準備する必要が出てきました。

そもそも「企業内転勤」とはどんな在留資格か

ここで改めて、在留資格「企業内転勤」の基本的な内容について確認しておきましょう。

「企業内転勤」は、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」の別表第一の二に規定されている在留資格の一つです。その名の通り、外国の事業所に勤務する職員が、日本の本店、支店、その他の事業所に期間を定めて転勤し、特定の活動を行う場合に付与されます。

【企業内転勤のポイント】対象者: 外国の本店や支社などに勤務する職員 – 転勤先: 日本国内にある関連企業(本店、支店、子会社、関連会社など) – 活動内容: 在留資格「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動(例:エンジニア、マーケティング、経理、通訳・翻訳など) – 在留期間: 5年、3年、1年、3ヶ月のいずれか – 重要な要件: 申請に係る転勤の直前に、外国にある本店、支店等において1年以上継続して「技術・人文知識・国際業務」に該当する業務に従事していること。

【「技術・人文知識・国際業務」との違い】 「企業内転勤」とよく比較されるのが「技術・人文知識・国際業務」です。活動内容は重なりますが、大きな違いは以下の点です。 – 学歴・職歴要件: 「技術・人文知識・国際業務」では、原則として大学卒業以上の学歴または10年以上の実務経験(国際業務の場合は3年以上)が求められます。一方、「企業内転勤」には学歴要件がありません。転勤前の1年以上の継続勤務が主な要件となります。 – 雇用形態: 「技術・人文知識・国際業務」は、日本の企業が新たに外国人を雇用する場合が典型的です。「企業内転勤」は、あくまで同一企業グループ内での異動(転勤)が前提となります。

学歴要件がないため、これまで比較的利用しやすい在留資格とされてきましたが、今回の厳格化により、転勤前の勤務実態がより重視されることになります。

なぜ今、審査が厳しくなるのか

今回の審査厳格化の背景には、高市政権が進める外国人政策の見直しがあります。政府は、適正な在留管理を徹底する方針を打ち出しており、その一環として今回の措置が講じられました。

【政府の動向】2025年末: 在留資格のあり方を抜本的に見直す「在留資格総点検」の方針が示される。 – 2026年1月23日: 関係閣僚会議にて、外国人材の受け入れ・共生に関する新たな基本方針を決定。 – 2026年4月: 上記方針に基づき、「企業内転勤」の運用見直しを開始。

政府が目指しているのは、「不正の排除」と「高度人材の積極的な受け入れ」という二本柱による外国人政策の再構築です。

残念ながら、一部で「企業内転勤」の制度が悪用されるケースが指摘されていました。例えば、悪質なブローカーが海外に実態の乏しいペーパーカンパニーを設立し、実際には単純作業に従事させる目的で外国人を「転勤者」として日本に送り込むといった手口です。

こうした不正を防ぎ、在留管理を適正化するために、転勤前の勤務実態を客観的な資料で確認する審査へと切り替わったのです。

また、この動きと連動して、不法就労を助長する行為への罰則も強化されています。2025年6月には「不法就労助長罪」が厳罰化され、罰則が「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」から「5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)」に引き上げられました。企業側には、これまで以上に厳格な外国人材の労務管理が求められています。

企業が準備すべきこと

今回の審査厳格化を受け、海外から従業員を転勤させる企業は、申請準備をより慎重に進める必要があります。具体的には、以下の点に注意してください。

  • 海外拠点での勤務実態を証明できる書類の整備
  • 「1年以上の継続勤務」要件の再確認
  • 社内の在留資格管理体制の見直し
  • 審査期間の長期化を想定したスケジュール管理

これらの準備は、企業のコンプライアンス遵守の観点からも極めて重要です。個別の状況によっては、さらに別の資料が求められるケースも考えられます。ご不明な点やご不安な点がございましたら、個別の状況について専門家にご相談ください。

在留資格をめぐるその他の制度変更にも注意

「企業内転勤」の厳格化だけでなく、現在、出入国管理制度全体が大きな変革期を迎えています。企業担当者の皆様は、以下の動向にも注意を払う必要があります。

  • 各種手数料の大幅な引き上げ(2026年3月10日閣議決定の入管法改正案)
  • 在留カードとマイナンバーカードの一体化(2026年6月14日施行)
  • 「育成就労」制度の創設(2027年4月施行予定)

これらの制度変更は、外国人を雇用するすべての企業に関わる重要な情報です。特に、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人は47万人を超え、増加傾向にあります。今後も、政府の動向や法改正の情報を継続的に収集し、適切に対応していくことが求められます。

まとめ

今回は、2026年4月から始まった在留資格「企業内転勤」の審査厳格化について解説しました。最後に、本記事の要点をまとめます。

  • 審査の変更点: 形式的な書類確認から、海外での勤務実態を客観的資料で証明する「実態ベースの審査」へ転換されました。
  • 厳格化の背景: 政府による「在留資格総点検」の一環であり、不正利用を防止し、適正な在留管理を目指す目的があります。
  • 企業がすべきこと: 転勤前の雇用契約書や給与明細、勤怠記録など、勤務実態を裏付ける客観的な資料を漏れなく準備することが不可欠です。
  • 今後の動向: 各種手数料の大幅な引き上げなど、出入国管理制度は今後も大きく変わっていくことが予想されます。

海外拠点から優秀な人材を日本に転勤させる「企業内転勤」は、企業のグローバル展開において重要な手段です。今回の制度変更を正しく理解し、適切な準備を行うことで、スムーズな受け入れを実現しましょう。


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