外国人材の雇用を検討しているものの、特定技能制度の複雑さに戸惑ってはいませんか。2026年8月2日付の日本経済新聞「きょうのことば」でも、特定技能制度の受け入れ上限が80万人に設定されたことが報じられ、関心が高まっています。この制度は人手不足の解消に役立つ一方、分野ごとの上限や1号・2号の違いなど、理解すべき点が多くあります。特定技能とは、人手不足が深刻な分野で即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格です。この記事では、外国人材の受け入れを検討する企業のご担当者と、日本で長く働きたい外国人の方に向けて、対象となる19分野、取得ルート、将来の展望まで、行政書士がわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- 特定技能は、国内の人手不足が深刻な特定産業分野で、即戦力となる外国人を受け入れるための在留資格です。
- 在留資格には、通算5年まで滞在可能な「1号」と、熟練した技能を持ち、在留期間の更新に制限がない「2号」があります。
- 対象は介護や製造業など19分野に及び、2029年3月末までの受け入れ上限は合計で約80万人と定められています。
- 特定技能1号を取得するには、試験に合格するルートと、技能実習2号から移行するルートの2種類があります。
特定技能制度とは?どのような在留資格なのか
特定技能制度とは、国内の人手不足に対応するため、2019年4月に創設された在留資格です。出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、一定の専門性・技能を持つ外国人を特定の産業分野で受け入れることを目的としています。制度の所管は出入国在留管理庁です。
この制度は、即戦力となる人材を確保するための仕組みであり、在留者数は年々増加しています。出入国在留管理庁の公表によると、2026年3月末時点の速報値で、特定技能1号の在留者数は404,527人、特定技能2号は12,420人に達しています。
特定技能1号と2号は何が違うのか?
特定技能には「1号」と「2号」の2種類があり、技能水準や在留期間などに違いがあります。特定技能1号は特定産業分野に属する相当程度の知識または経験を要する技能を持つ外国人向け、2号は同分野で熟練した技能を持つ外国人向けの資格です。
両者の主な違いは以下の表の通りです。
| 項目 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 技能水準 | 相当程度の知識・経験 | 熟練した技能 |
| 在留期間 | 通算で上限5年 | 上限なし(更新可) |
| 家族の帯同 | 原則として不可 | 可能(配偶者、子) |
| 対象分野数 | 19分野 | 11分野 |
特定技能2号は、在留期間の更新に回数制限がなく、要件を満たせば配偶者や子供を日本に呼び寄せることができます。ただし、対象分野は11分野に限られます。介護分野は、在留資格「介護」への移行ルートが別途用意されているため、特定技能2号の対象には含まれていません。
対象の19分野には何があるのか?
特定技能の対象となる「特定産業分野」は、2026年1月23日の閣議決定により19分野に拡大されました。これらの分野は、生産性向上や国内人材確保の努力を行ってもなお、人材の確保が困難な状況にあると認められた産業です。
対象となる19分野は以下の通りです。
- 介護
- ビルクリーニング
- リネンサプライ
- 工業製品製造業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 自動車運送業
- 鉄道
- 物流倉庫
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 林業
- 木材産業
- 資源循環
このうち、「リネンサプライ」「物流倉庫」「資源循環」の3分野は2026年1月に追加されたもので、関連する省令等の準備が整い次第、受け入れが開始される予定です。特定技能は分野ごとに上限が設定されているため、自社が属する分野の状況を常に確認することが重要です。
受け入れ上限80万人とはどのような仕組みか?
受け入れ上限80万人とは、政府が分野ごとに定める「受入れ見込数」の、2029年3月末までの合計値のことです。この上限に達すると、その分野での新規受け入れが停止される可能性があります。
2026年1月23日の閣議決定により、2029年3月末までの5年間における特定技能1号の受入れ見込数は、全19分野の合計で80万5,700人と設定されました。
主要な分野の受入れ見込数は以下の通りです。
| 分野名 | 受入れ見込数(上限) |
|---|---|
| 工業製品製造業 | 199,500人 |
| 飲食料品製造業 | 133,500人 |
| 介護 | 126,900人 |
| 建設 | 76,000人 |
| 農業 | 73,300人 |
| 外食業 | 50,000人 |
実際に、外食業分野では在留者数が上限の5万人に近づいたため、2026年4月13日から新規の在留資格認定証明書(COE)の交付が停止され、在留資格変更許可申請も原則不許可とされています。
外食業の停止措置の詳しい内容と企業の対応策は、コラム「特定技能の受け入れ停止はなぜ?外食業の上限逼迫と企業の対応策」で解説しています。
特定技能1号を取得するにはどうすればよいか?
特定技能1号の取得ルートは、試験に合格する「試験ルート」と、技能実習2号から移行する「移行ルート」の2つです。外国人ご本人の経歴や状況によって、選択すべきルートが異なります。受け入れを検討する企業は、候補者がどちらのルートに該当するかを事前に確認する必要があります。
- (1) 試験ルート:海外にいる方や、日本に留学生として滞在している方などが対象です。このルートでは、分野ごとに実施される「技能試験(特定技能1号評価試験など)」と、日本語能力を測る「日本語試験」の両方に合格する必要があります。日本語試験は、「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」または「日本語能力試験(JLPT)N4以上」の合格が求められます。なお、介護分野などでは、これらに加えて追加の日本語要件が課される場合があります。
- (2) 技能実習からの移行ルート:日本で技能実習2号を良好に修了した外国人が対象です。この場合、特定技能への移行に際して日本語試験は免除されます。技能試験については、従事していた技能実習の職種・作業内容が、移行を希望する特定技能の分野・業務区分と関連性があると認められる場合に限り免除されます。関連性がない分野へ移行する場合は、希望する分野の技能試験に合格する必要があります。
これからの特定技能はどうなるのか?育成就労制度との関係
特定技能は、2027年4月1日に施行される新制度「育成就労制度」からの移行先として、今後さらに重要になる見込みです。育成就労制度の開始にともない、これまでの技能実習制度は廃止されることが決まっています。
育成就労制度は、人材育成と人材確保を目的とし、原則3年間の就労を通じて特定技能1号の水準まで人材を育成することを前提に設計されています。政府は、育成就労から特定技能への円滑な移行を制度設計の前提としています。政府は2029年3月末までの育成就労の受入れ見込数を42万6,200人としており、特定技能の80万5,700人と合わせると、最大で123万1,900人の受け入れが計画されています。
まとめ:特定技能の全体像を知り、自分に合うルートを早めに確認する
特定技能制度は、日本の人手不足を補う重要な仕組みですが、その内容は複雑です。この制度は、分野ごとに上限(受入れ見込数)が設けられている点が大きな特徴です。1号は通算5年の在留期間ですが、熟練技能を持つ2号へ移行すれば無期限で更新が可能となり、キャリアパスも広がります。
外国人ご本人にとっても、受け入れを検討する企業にとっても、対象となる19分野や2つの取得ルートを正しく理解し、どの方法が最適かを見極めることが成功の鍵となります。特に、分野ごとの上限数は受け入れ計画に直結するため、早めに専門家へ相談し、準備を進めることをお勧めします。
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よくある質問(FAQ)
Q1. 特定技能と技能実習は何が違いますか?
A1. 特定技能と技能実習の最も大きな違いは制度の目的です。特定技能は、国内の人手不足解消を目的とし、即戦力となる外国人を「労働者」として受け入れる制度です。一方、技能実習は、日本で培った技能を母国の経済発展に活かしてもらう「国際貢献」を目的としています。この目的の違いから、特定技能では同一の業務区分内などでの転職が可能ですが、技能実習では原則として転職が認められていません。なお、技能実習制度は2027年4月1日に廃止され、特定技能への移行を前提とした「育成就労制度」が開始される予定です。
Q2. 特定技能1号の5年が終わったらどうなりますか?
A2. 特定技能1号の在留期間は通算で5年が上限です。5年が経過した後の選択肢は主に次の4つです。
- 対象の11分野で試験合格などの要件を満たし、在留期間に上限のない「特定技能2号」へ移行する
- 介護分野の場合、介護福祉士の資格を取得して在留資格「介護」へ変更する
- 「技術・人文知識・国際業務」など他の在留資格の要件を満たして変更する
- いずれの要件も満たせない場合は帰国する
キャリアプランを早めに立て、必要な準備を進めることが重要です。個別の状況については専門家にご相談ください。
Q3. 上限に達した分野はどうなりますか?
A3. 特定技能制度では、分野ごとに「受入れ見込数」が定められており、これが事実上の上限として機能します。在留者数がこの上限に近づくと、新規の受け入れが停止される場合があります。例えば、外食業分野では2026年4月13日から、新たな在留資格認定証明書(COE)の交付が停止され、在留資格変更許可申請も原則不許可とされています。ただし、これはあくまで新規の受け入れ停止であり、すでに特定技能「外食業」で在留している方の在留期間更新は引き続き可能です。詳しくは「特定技能の受け入れ停止はなぜ?外食業の上限逼迫と企業の対応策」で解説しています。
Q4. 日本語はどのくらいのレベルが必要ですか?
A4. 特定技能1号を取得するためには、原則として日本語能力試験(JLPT)で「N4」以上に合格するか、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)で一定以上のスコアを取得する必要があります。N4は「基本的な日本語を理解することができる」レベルとされています。ただし、介護分野では、これらの試験に加えて「介護日本語評価試験」にも合格する必要があり、より実践的なコミュニケーション能力が求められます。技能実習2号を良好に修了して特定技能へ移行する場合は、日本語試験は免除されます。
Q5. 特定技能2号にはどうすればなれますか?
A5. 特定技能2号になるには、まずご自身が従事する分野が2号の対象(ビルクリーニング、建設、飲食料品製造業など11分野)であることが前提です。その上で、各分野を所管する省庁が定める試験に合格し、「熟練した技能」を有することを証明する必要があります。例えば、外食業分野では「外食業特定技能2号評価試験」への合格に加え、日本語能力試験(JLPT)N3以上、2年以上の店舗管理を補助する実務経験などが求められます。特定技能1号から2号へ移行することで、在留期間の更新に制限がなくなり、家族の帯同も可能になります。
参考資料
- 日本経済新聞(2026年8月2日付)「きょうのことば 特定技能制度 全分野の上限は80万人」
- 出入国在留管理庁「特定技能制度及び育成就労制度に係る制度の運用に関する基本方針の概要」
- 出入国在留管理庁「特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針について」
- 出入国在留管理庁「分野別運用方針の主要な記載事項」
- 出入国在留管理庁「特定技能2号在留外国人数(令和7年12月末現在)」
- 出入国在留管理庁 制度説明資料「外国人労働者に関する制度概要」
- 出入国在留管理庁「特定技能『外食業分野』における受入れ上限の運用について」
- 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
- 厚生労働省「外国人技能実習制度について」
- 一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)「特定技能2号試験について(外食業)」
(参考資料のURLはいずれも2026年8月5日参照)

