特定技能の受け入れ停止はなぜ?外食業の上限逼迫と企業の対応策

特定技能 受け入れ上限迫る 外食業は新規停止・企業の対応策

特定技能での外国人材雇用を計画していた企業様、また日本での就労継続を目指す外国人の方々にとって、各分野で設定された「受け入れ上限」は非常に重要な問題です。2026年4月には外食業で特定技能1号の新規受け入れが停止され、他の業種でも上限達成率が高まっています。この状況は、今後の採用計画やご自身のキャリアプランに大きな影響を与えかねません。この記事では、特定技能の受け入れ上限に関する最新情報と制度の仕組みを解説し、企業と外国人材双方が今取るべき具体的な対応策を、行政書士の視点から分かりやすくご提案します。

目次

この記事のポイント

  • 2026年4月13日より、特定技能「外食業」分野の新規受け入れ(海外からの呼び寄せ・国内での資格変更)が停止されました。
  • 飲食料品製造業や建設業など、他の分野でも在留者数が上限に近づいており、企業の採用計画に影響が出ています。
  • 企業は、上限のない「特定技能2号」への移行支援や、他の在留資格の検討など、多角的な人材戦略が求められます。
  • 外国人本人は、在留期間の更新は可能ですが、通算5年の上限を見据え、特定技能2号へのステップアップを早めに準備することが重要です。

特定技能の受け入れ上限はどこまで迫っているのか?

2026年3月末時点で外食業95.4%、飲食料品製造業72.2%、建設67.2%と、複数の分野で上限到達が現実的な課題になっています。

日本経済新聞(2026年8月2日付)は、出入国在留管理庁が公表した2026年3月末時点のデータに基づき、特定技能の分野別上限達成率を報じました。この報道によると、特に外食業は上限数に対して在留者数が95.4%に達し、これが2026年4月の新規受け入れ停止措置につながりました。

他の主要分野でも上限達成率は上昇しており、企業の採用計画への影響が懸念されています。

特定技能 分野別の上限達成率(2026年3月末時点)

分野名上限達成率
外食業95.4%
飲食料品製造業72.2%
建設67.2%
介護58.9%
農業54.5%

出典:日本経済新聞 2026年8月2日付報道(出入国在留管理庁 2026年3月末時点データに基づく)

外食業だけでなく、飲食料品製造業(72.2%)や建設業(67.2%)でも、計画的な人材確保がこれまで以上に重要になっています。

外食業の「新規受け入れ停止」では何が止まったのか?

2026年4月13日から、海外から新たに外国人を呼び寄せる手続きと、留学生などが国内で資格を変更する手続きが原則として停止されました。

外食業分野では、2026年2月末時点で特定技能1号の在留者数が約4万6千人と上限の5万人に迫り、2026年5月頃には上限を超えることが見込まれていました。このため、2026年4月3日の農林水産大臣による要請を受け、法務大臣が同年4月13日から新規受け入れを停止する措置を開始しました。具体的に停止された手続きと、引き続き可能な手続きは以下の通りです。

■ 停止された手続き

  • 在留資格認定証明書(COE)の交付申請:海外にいる外国人を新たに雇用するための申請です。2026年4月13日以降に受理された申請は、原則として交付されません。
  • 在留資格変更許可申請:留学生や技能実習生などが、日本国内で特定技能「外食業」に資格を変更するための申請です。こちらも2026年4月13日以降の受理分は原則不許可となります。

■ 引き続き可能な手続き

  • 在留期間更新許可申請:すでに特定技能「外食業」で働いている方のビザ更新は、通常どおり審査されます。
  • 外食業分野内での転職:同じ外食業の分野内で、別の会社へ転職するための在留資格変更は引き続き可能です。
  • 技能実習からの移行:技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)を良好に修了した方が、特定技能へ移行する申請は可能です。
  • 2026年4月12日までに受理された申請:停止措置開始前に受理された申請については、引き続き審査が行われます。

外食分野の特定技能1号は新規受け入れが停止されましたが、在留更新や分野内での転職は可能です。 ご自身の状況でどの手続きが可能か、正確に把握することが大切です。

なぜ受け入れが停止されるのか?制度上の仕組み

分野ごとに定められた「受入れ見込数」が事実上の上限として運用され、在留者数が達すると新規受け入れが停止される仕組みです。

特定技能制度は、2019年4月の創設時から、無制限に外国人を受け入れる制度ではありません。政府は「分野別運用方針」において、5年間で受け入れる人数の見込みである「受入れ見込数」を分野ごとに設定しています。この「受入れ見込数」は、その分野で受け入れが可能な人数の上限として運用されることが閣議決定で定められています。

今回の外食業に対する受入れ停止(受け入れ停止)の措置は、このルールに基づき、出入国管理及び難民認定法(入管法)第7条の2第3項及び第4項を根拠として行われました。在留者数が上限に近づいたため、法務大臣が新規の受け入れを停止した形です。

なお、2026年1月23日の閣議決定では、2029年3月末までの特定技能全体の受入れ見込数が80万5,700人と設定されており、今後も各分野の在留者数の動向が注視されます。この仕組み上、将来的に在留者数が上限を下回れば、受け入れが再開される可能性もあります。

特定技能制度の全体像(対象19分野・1号と2号の違い・取得ルート)は、コラム「特定技能とは?19分野の上限80万人、1号・2号の違いを解説」で解説しています。

外国人を雇用する企業は今、何をすべきか?

既存人材の定着支援を強化するとともに、上限のない特定技能2号への移行支援や、他の在留資格の活用を検討するなど、多角的な対応が求められます。

外食業での新規受け入れ停止や他分野での上限接近という事態を受け、外国人材の確保を目指す企業は、これまで以上に戦略的なアプローチが必要です。具体的な選択肢は次の4つです。

  • 既存人材の在留期間更新と定着支援:現在雇用している特定技能1号人材の在留期間更新を確実に行い、長く働いてもらえる環境を整えることが最優先です。また、同じ分野内での転職は可能なため、国内にいる特定技能人材を採用することも有効な手段となります。
  • 特定技能2号への移行を支援する:熟練した技能を持つ人材を対象とする「特定技能2号」には、受け入れ上限が設定されていません。在留期間の更新回数にも制限がなく、要件を満たせば家族の帯同も可能です。企業にとって、優秀な人材に永続的に活躍してもらうための極めて重要な選択肢です。企業側は、移行に必要な試験対策の費用補助や、店舗管理を補助する実務経験の機会提供など、積極的に移行を後押しすることをお勧めします。
  • 「技術・人文知識・国際業務」など他の在留資格を検討する:大学や専門学校卒業などの学歴要件と、学んだ内容と職務内容の関連性の要件を満たす人材であれば、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格で採用できる可能性があります。ただし、この資格は本社での企画、マーケティング、通訳業務などが対象であり、店舗での接客や調理といった現場業務には原則として従事できません。特定技能とは要件や従事できる業務内容が全く異なる点に十分な注意が必要です。
  • 2027年4月施行の育成就労制度の動向を注視する:現在の技能実習制度に代わり、2027年4月1日から「育成就労」制度が始まります。この制度は特定技能への移行を前提として設計されており、外食業も対象分野に含まれています。将来的な人材確保のルートとして、制度の詳細を今のうちから把握しておくことが重要です。

特定技能1号の新規採用が難しくなっても、人材を確保・維持する選択肢は複数あります。 早めに自社の状況に合った対策を検討し、準備を進めることが不可欠です。

外国人本人への影響は?在留を続けるためにできること

在留期間の更新は引き続き可能です。ただし通算5年の上限があるため、特定技能2号への移行準備を早めに進めることが鍵です。

今回の新規受け入れ停止措置は、日本で就労を続けたい外国人の方にとっても大きな関心事です。ご自身の在留資格を守り、キャリアを継続するために、以下の点を理解しておくことが重要です。

  • 在留期間の更新は通常どおり可能:新規受け入れは停止されましたが、すでに特定技能「外食業」で働いている方の在留期間更新申請は、これまで通り行うことができます。在留期限が近づいたら、忘れずに更新手続きを行いましょう。
  • 特定技能1号は通算5年が上限:特定技能1号で日本に在留できる期間は、分野を問わず通算で最長5年です。このルールに変更はありません。5年を超えて日本で働き続けるためには、別の在留資格への変更が必要です。
  • 特定技能2号へのステップアップを目指す:外食業分野で5年を超えて働くための最も有力な選択肢が、特定技能2号への移行です。2号になるには、「外食業特定技能2号評価試験」と「日本語能力試験(JLPT)N3以上」の両方に合格し、さらに外食業の事業所で副店長やサブリーダーなど複数の従業員を指導しながら業務に従事した経験(店舗管理を補助する経験)が2年以上あることが必要です。
  • 2号試験の経過措置を活用する:万が一、2号の技能試験に不合格となった場合でも、合格基準点の8割以上の得点があり、かつN3以上の日本語能力があるなどの条件を満たせば、通算在留期間5年を超えて最長1年間の在留が認められる経過措置があります。再挑戦の機会として活用できます。

特定技能1号の新規受け入れが停止された今だからこそ、特定技能2号という次のステップを見据えたキャリアプランを立て、早めに準備を始めることが何よりも大切です。

まとめ:上限時代の在留資格は「早めの準備」が鍵

特定技能制度における「受け入れ上限」が、外食業での新規受け入れ停止という形で現実のものとなりました。他の分野でも上限が迫っており、企業・外国人材ともに、今後の動向を注視し、計画的に対応していくことが不可欠です。

外食業の特定技能1号は新規の受け入れが止まっていますが、在留期間の更新や、上限のない特定技能2号への移行、あるいは「技術・人文知識・国際業務」など他の在留資格の検討といった選択肢は残されています。どの道を選ぶにしても、要件の確認や書類の準備には時間がかかります。不測の事態を避け、安定した雇用と在留を確保するためには、「早めの準備」と専門家への相談が成功の鍵を握ります。

在留許可申請・ビザ手続きでお困りの方は、外国人雇用労務士の資格も持つ当事務所にご相談ください。在留資格の変更・更新から就労ビザの取得まで、丁寧にサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 外食業の特定技能はいつ再開されますか?

A1. 2026年8月5日現在、政府から受け入れ再開の具体的な時期は示されていません。再開されるためには、帰国者が出るなどして、分野全体の在留者数が「受入れ見込数」(上限)を相当程度下回る必要があります。状況は常に変動するため、出入国在留管理庁や、分野所管省庁である農林水産省の公式発表を定期的に確認することが重要です。見通しが不透明なため、再開を待つだけでなく、特定技能2号への移行など他の選択肢を並行して検討することをお勧めします。

Q2. 今から外食業で特定技能の申請はできますか?

A2. 新規での申請は原則としてできません。2026年4月13日から、海外にいる外国人を新たに呼び寄せるための「在留資格認定証明書(COE)」の申請や、留学生などが日本国内で資格を変更するための「在留資格変更許可申請」は、原則として不許可・不交付となっています。ただし、すでに外食業の特定技能1号で在留している方の「在留期間更新」や、同じ外食業分野の会社に転職するための申請は引き続き可能です。

Q3. 特定技能2号に上限はありますか?

A3. いいえ、特定技能2号には受け入れの上限(受入れ見込数)は設定されていません。そのため、特定技能1号の新規受け入れが停止されている外食業の分野においても、要件を満たせば特定技能2号への移行は可能です。特定技能2号は、在留期間の更新に回数制限がなく、配偶者や子の帯同も可能になるなど、長期的なキャリア形成を目指す上で非常に有利な在留資格です。企業にとっても、熟練人材を安定的に雇用し続けられるという大きなメリットがあります。

Q4. 他の業種も停止される可能性はありますか?

A4. 可能性は十分にあります。2026年3月末のデータでは、飲食料品製造業(上限達成率72.2%)や建設業(同67.2%)など、複数の分野で在留者数が増加し、上限に近づいています。各分野で在留者数が「受入れ見込数」に達したと判断されれば、外食業と同様に、分野所管大臣からの要請に基づき、法務大臣が新規受け入れを停止する措置を取ることが制度上定められています。自社が関連する分野の在留者数の動向については、日頃から情報を収集しておくことが重要です。

Q5. 留学生から外食業の特定技能への変更はできますか?

A5. 2026年4月13日以降、原則としてできなくなりました。外食業分野における特定技能1号への在留資格変更許可申請は、受け入れ停止措置の対象となっており、新規の申請は認められない状況です。したがって、これから大学や専門学校を卒業し、外食業で特定技能として働きたいと考えていた留学生の方は、別のキャリアパスを検討する必要があります。例えば、上限に達していない他の特定産業分野での就職を目指すか、ご自身の学歴や専攻を活かせる「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格の要件を満たすか、といった選択肢が考えられます。


参考資料

(参考資料URLの参照日:すべて2026年8月5日)

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